一日中、脳と切り離された体が機械仕掛けで動いていた感覚。

帰りがけ、クリニックの駐車場にぽつんと忘れられた車から視線を引き剥がして駅へと足を急がせた。

少し混み合った電車に揺られながら、ひしひしと絶望感に押し潰されてく自分がいた。・・・導かれた可能性には残酷な現実しかなかったから。




お茶漬けとトマトサラダだけの夜ご飯とも呼べない食事を済ませ、ソファベッドに力なく沈む。テレビから漏れ続く楽しげな笑い声も、わたしの耳をただ通過するだけ。

冷静なのか麻痺してるのかもよく判らなくなった頭の中で、やっとのこと手動で重たい思考回路を押し出していく。

連絡がなかったあの夜。クリニックに車を残して何かがあった。

本当はあの夜から、ナオさんは診療にも来ていなかった。

わたしへの連絡を絶ってるのか、できないのか。

スマホで検索してみたけれど、事件も事故もそれらしいニュースは一つもない。でもどうしたって離婚が関わってるのは間違いない。

いま分かるのはそこまで。じゃあどこにいるの。どうしてるの。その先は果ての見えない分厚い壁の向こう。