誰にでも分かるいちばん易しい答えは。“奥さんと離婚しない。・・・それがいちばん現実的で理由を考える必要さえない。

話し合いを重ねて、そこでやっとお互いを理解してやり直しを決めた。実直なナオさんだからこそ、子供のことを考えれば選択肢なんてひとつしか。

本当にそうだったなら。・・・きちんと打ち明けて頭を下げてくれる人だと思っていた。こんな仕打ちをする人だったなんて信じられなかった。

それとも。わたしが盲目になっていた? 見誤ってた? 見抜けなかった?

胸の真ん中になにかが突き立てられ、ギリギリと軋んだ音を立ててめり込んでくる。苦しい。イタイ。奥の奥まで。

「ッッ・・・ッ」

一瞬、喘いで。デスクに突っ伏した。小刻みに躰が震える。だめ。今はまだ泣けない。ここじゃ泣けない・・・!

呪いをかけるように自分に言い聞かせた。


“まだ。壊れるときじゃない”。