会社に着いて、いつも一番乗りの社長に挨拶をして。着替えて開店準備をしてるあいだに郁子さん夫婦が来て。

ルーティンだから体は勝手に動いていた。頭の中は空洞で、自己防衛本能が作用してるのか、心は麻酔が打たれたように感覚も感情も麻痺してる。

来客の対応や書類の作成をこなし、お昼休憩で一人きりになったとき。ようやく朝に見た光景がぼんやり浮かんだ。

ナオさんはクリニックに来てる。
普段どおりに仕事をしてる。
でも連絡はない。
スマホが通じない。
すぐ近くにいるのに。
会いにもこない。

事実をただ積み上げていく。機械的に。ただ。そこから導きだされる答えを求めて。