「・・・沙喜には一切接触しないように、弁護士を通して彼女に伝えるよ。もし向こうの弁護士がなにか言ってきても、沙喜は答えなくていい。そのときは俺にすぐに電話して。いいね」

わたしをずっと離さずに優しいキスを何度も落としては。いつもより長く一緒にいてくれたナオさんは、部屋を出る前に言ってくれた。そして。

「沙喜は壊れてるんじゃないんだ、ちょっとずつ色んなところが錆びついてるだけだよ。油を差せば治るから、安心して俺に任せなさい」

クリニックで見せるみたいな自信と責任に満ちた笑顔が、心を包み込んだ。
暖かくて、そんな風に労られたのが切なくて。ナオさんの胸でまた泣いた。




まだ始まってもいない未来(あした)を信じるのは、愚かだろうか。盲目なんだろうか。儚い夢で終わるだろうか。

それでもいい。次はサヨナラすればいい、セカイとわたしに。永遠に。



それでいい。