「自分の人生なのに、自分で生きてる気がしなかったの。勝手に色を付けられて、消されて、・・・本当の色が分かんなくなっちゃった」

『お姉ちゃんなんだから』のひと言で母は都合よく、わたしに手をかけたりかけなかったりした。関心のほとんどは、妹に向けられていた。
学校での出来事や友達の話を聞いてもらおうと話しかけても、忙しいとか後でとか、あしらわれて終わった。そのうち自分から話さなくなった。いつの間にか母の中で、わたしは『何を考えているのか分からないお姉ちゃん』になった。大人になった今でも。意思のあるひとりの人間には見えてないだろうと思う。

夫や妻に一方的な役割だけ求める人に。わたしやナオさんは何に見えてるんだろう。ふと思った。

「一緒に色を決めようって言ってくれたのナオさんが初めてで、なんかすごく嬉しい・・・のかな」

どこか泣きたいような気持ちと()い交ぜになって。
ナオさんは少し目を細めると、わたしを引き寄せて腕の中に閉じ込める。