そのままキスが繋がり、わたしからも彼の首に手を回して、闇夜の下で背徳に呑まれていく。

啄んでは離れる、ナオさんのキスが好き。遊ばれているみたいだけど扇情的で。

「・・・こら。あんまり俺を煽らないの」

クスリと笑って、ナオさんがやんわりわたしを離した。

「このまま、どこかに連れてかれても知らないよ?」

「誘拐するの?」

わたしも冗談ぽく。

「ん。・・・誰も知らないところに、ふたりだけで」

淡く笑んだその眸には、何かを押し殺したような色が滲んで見えた。
少し離れた道路灯の光だけが頼りで、はっきりとは分からない。気配。・・・だろうか、何となく気になった。

「ナオさん、なにか・・・あった?」

ないよ。
いつもだったら、笑って済ませてしまいそうな人だった。
僅かに表情が翳り。彼は小さく息を吐いて弱々しく微笑んだ。

「・・・沙喜に聞かせる話じゃないのは自分がよく分かってる。でも・・・俺のことはなんでも知っててほしい。分け合いたい。自分勝手なのは百も承知で・・・話してもいい?」