ドライブと言ってもご近所だろうと行き先を気にしないでいたら。車は、片側2車線の国道をどんどん山間に向かっていく気がする。

「ねぇナオさん、これってどこまで行くの?」

フロントガラス越しに流れる道路の案内標識の地名を、頭の中の地図上にも描きながら。

「ちょっと峠のほうまでね」

「もしかして走り屋さんだった?」

目を丸くして横顔に訊ねる。
峠と言えば。この辺りでは知る人ぞ知る、車好きが集まる場所というか。
カーブの多い山道をサーキット代わりに、夜な夜なエンジンを唸らせているとか、いないとか。事故も多いから心霊スポットとしても有名どころだ。

「俺はそこまでじゃないよ。友人が好きだっただけ。それに今はそんなに走るヤツいないから」

クスクスとナオさんが笑う。

「沙喜が知ってたなんて意外だった。昔の彼氏に車好きがいたの?」

「かな」

「俺もその頃の沙喜に会いたかったな・・・。もっと早く会いたかった」

繋ぎっぱなしの指に力が籠もる。

「・・・うん。わたしも・・・」

きゅっと握り返すと、なんだか心臓まで締め付けられた。



それでも。いま出会えたことに意味があると。思いたかった。