本気で愛して、と前に彼は言った。

足りないモノを埋め合って、愛だけがあればいい?
夫婦とはベツモノの、“一生の恋人”?

それとも最後の賭けって。選ぶなにかをもう決めてるの?

ナオさんは考えるように黙ったあと。探すように、ゆっくりと一つ一つ言葉を並べる。

「今はきっと沙喜を待たせるだけになる。・・・子供に罪はないし、自分勝手な父親でしかないのも自覚してる。でも俺は・・・人形から人間に戻って沙喜といたい。そう決心できたくらい俺にとって沙喜は、無いと生きていけないもの、・・・かな」

仄かに笑まれた気配に、そっと胸元から顔を上げた。

儚げな眸に見つめられて、泣きたい気持ちになった。
出会うべきじゃなかったのかもしれないと思うくらい。
ナオさんとわたしは。
お互いを誰より理解できてしまえる。
確信した。

「いつって約束ができないから、無責任なことはまだ言いたくない。どうしても信じててほしいのは、不条理なこの世界で・・・俺が誰より沙喜を愛してるってこと」



絶望しかないコノセカイで。


たった一つの愛があれば。


生きていける。


わたしも。あなたも。


ただ寂しくて悲しい魂に。・・・共鳴したの。