マンションに着き、今までで一番自然な気持ちでナオさんを部屋に招き入れた。
背中で玄関ドアが閉まる音が聞こえたと同時に、先に入ったわたしの腕を彼が引いて振り返らせ。一息にキスを繋げた。

両頬を掌で捕まえ。好いように角度を変えながら、しなやかに貪る。

「・・・ぅん・・・ッ・・・」

頭の芯が蕩かされ、昂ぶりに堪えきれずにくぐもった声を漏らすと、さらに深く絡みつき、うまく呼吸ができなくなる。
小さく身を捩って抵抗するようにナオさんにそれを伝えたら、やっと離してもらえた。

「ごめん。全然し足りない」

紳士服のモデルにでもなれそうな、端正な顔立ちに切なげに笑まれて。
誰かを好きになる感情には理由がないことを、思い知るのだ。


「わたしも・・・。ナオさんが足りない」

そのあとベッドでわたしだけを喘がせた彼はそれでも、幸せそうだった。