「それより沙喜。治療も終わったし、もう敬語と『先生』呼びはやめたら?」

ふっと口許を緩め、言われる。
気持ちの問題で、通院中は、って線引きしてたのをどうやら見通されていたらしい。

「なんて呼べばいいですか?」

「ふつうに下の名前でいいよ」

直彦(ただひこ)さん?」

「学生時代の友達はみんな『ナオ』って呼ぶんだ。『直』って、だいたいそっちで読むでしょ」

「じゃあ・・・ナオさん。でいいですか?」

「ん。あと敬語」

「あ、うん」

繋いだ指に力が籠もって、ナオさんがニコリと笑った。


告白から1ヶ月近く経って。ようやく呼び方が変わった。
順番立ったレンアイにはならなそうだし、進み方の速度もかなり不規則な予感。

でも。あなたは隣りにいてくれる。


私を独りで歩かせたりしないで。