午前中、クリニックで顔は見たのに?
そんな表情を読まれたのかもしれない。
「患者じゃない沙喜にどうしても会いたくてね」
手を繋ぎ、マンションの方向へと向かってロータリーを歩き出す先生。
同じように帰路につくサラリーマンや学生達に混ざり、一人だったらスタスタと早足になるのを。二人でゆっくりと。腕と肩を触れ合わせながら並んで。
「先生、ご飯たべます?」
二人分となると、買い足しが必要かもしれない。
「あぁ・・・ごめん。そこまでゆっくり出来そうにないかな」
「気にしないでください」
申し訳なさそうに眉が下がった横顔に、明るい口調で返した。
優先順位がある付き合い方は慣れてる。
「そこは怒っていいとこ」
穏やかだけど諭すような声音が降って、隣りを仰げば。
こっちに傾けられた視線と一瞬交わる。
「恋人らしいこともしてやれない俺を、沙喜は責めていいんだよ。・・・『赦す』のと『諦める』のは違うんだから」
このひとは。どこまで。
同じ痛みを知っているんだろう。
諦めることで自分を守ってきたわたしと。同じ痛みを。
そんな表情を読まれたのかもしれない。
「患者じゃない沙喜にどうしても会いたくてね」
手を繋ぎ、マンションの方向へと向かってロータリーを歩き出す先生。
同じように帰路につくサラリーマンや学生達に混ざり、一人だったらスタスタと早足になるのを。二人でゆっくりと。腕と肩を触れ合わせながら並んで。
「先生、ご飯たべます?」
二人分となると、買い足しが必要かもしれない。
「あぁ・・・ごめん。そこまでゆっくり出来そうにないかな」
「気にしないでください」
申し訳なさそうに眉が下がった横顔に、明るい口調で返した。
優先順位がある付き合い方は慣れてる。
「そこは怒っていいとこ」
穏やかだけど諭すような声音が降って、隣りを仰げば。
こっちに傾けられた視線と一瞬交わる。
「恋人らしいこともしてやれない俺を、沙喜は責めていいんだよ。・・・『赦す』のと『諦める』のは違うんだから」
このひとは。どこまで。
同じ痛みを知っているんだろう。
諦めることで自分を守ってきたわたしと。同じ痛みを。