先生の迷いのない手さばき。
タオルで覆われていて、何も見えてないけど。
今のわたしは『患者』。それだけのこと。


「お大事に」

「ありがとうございました」

次回の治療について説明を受け、お礼を言って会計を待つ。



先生がイスに座ったまま移動して、倒された診察台の上のわたしの頭の方に回り、見えにくい奥歯を診察してくれていた時。
先生の胸元かどこかが、つむじ辺りに密着して。・・・意味もない接触なのに意識しちゃいそうだった。

・・・・・・女子高生じゃあるまいし。

自分に溜息を吐くと。
次の予約と会計を済ませてクリニックを後にした。



いつ来るかも分からない、先生からの連絡を心待ちにするほど初心(うぶ)じゃない。
ユウスケが来ると言えば。好きに抱かせる。きっと。・・・変わらない、なにも。