生姜醤油がきいたお肉は、柔らかくて絶妙に香ばしいし、千切りキャベツと一緒に食べても美味しかった。
味見させてもらった身の厚い、ふっくらした鯖のミソ煮も濃いめの味付けで。お酒にもご飯にも合うこと間違いなしの一品。
「また来ようね」
吉見先生は涼しげに微笑むと、お店からちょっと離れた専用駐車場までのわずかな距離も手を繋いで歩く。
学生時代の部活動の話や、休日の過ごし方。踏み込みすぎない程度のおしゃべりをしただけなのに、『次』を当然のように口にした。
始まりはここからだとでも言うように。
『赤信号』を堂々と、わたしの手を引いて進むつもりなんですか。
がらんどうの体内で、ぽつんと呟く。
それとも先生にとって。色に意味はありませんか。
自分の身は守れるように、いつでもわたしを放してしまえばいいんだから。
玄関ドアの向こうに消えていく、ユウスケの後ろ姿が思い浮かんだ。
いつも。
振り返ることなく帰っていく背中。名残惜しさもないように。
あの瞬間の言いようのない空しさ。諦め。・・・・・・自業自得の絶望。孤独。
きっと。先生が残していくものも同じ。
誰もみんな。
わたしを置いていく。
最初から分かってるなら、その方がいい。
裏切られなくてすむ。
傷が少なくてすむ。
刹那でいい。
永遠はいらない。
優しく絡む指先に。
わたしは終わる時の準備をはじめていた。
味見させてもらった身の厚い、ふっくらした鯖のミソ煮も濃いめの味付けで。お酒にもご飯にも合うこと間違いなしの一品。
「また来ようね」
吉見先生は涼しげに微笑むと、お店からちょっと離れた専用駐車場までのわずかな距離も手を繋いで歩く。
学生時代の部活動の話や、休日の過ごし方。踏み込みすぎない程度のおしゃべりをしただけなのに、『次』を当然のように口にした。
始まりはここからだとでも言うように。
『赤信号』を堂々と、わたしの手を引いて進むつもりなんですか。
がらんどうの体内で、ぽつんと呟く。
それとも先生にとって。色に意味はありませんか。
自分の身は守れるように、いつでもわたしを放してしまえばいいんだから。
玄関ドアの向こうに消えていく、ユウスケの後ろ姿が思い浮かんだ。
いつも。
振り返ることなく帰っていく背中。名残惜しさもないように。
あの瞬間の言いようのない空しさ。諦め。・・・・・・自業自得の絶望。孤独。
きっと。先生が残していくものも同じ。
誰もみんな。
わたしを置いていく。
最初から分かってるなら、その方がいい。
裏切られなくてすむ。
傷が少なくてすむ。
刹那でいい。
永遠はいらない。
優しく絡む指先に。
わたしは終わる時の準備をはじめていた。