昔ながらの食堂って雰囲気のお店には、サラリーマン風の人もいれば、職人さんらしい作業服姿の人も。
お一人様かお二人様で、ときどき豪快な笑い声が聞こえた。

「子供のころ、同級生の家がやってた近所の食堂によく行ってたんですけど。こんな感じだったなって思い出しました」

オムライスとかチャーハンとか。懐かしい味。

「ここ、俺もよく来てたんだよ。代替わりしちゃって知ってる人はもういないけどね、今でもたまに寄るんだ。なんとなく沙喜ちゃんは嫌がらないだろうなってさ。思ってたとおりかな」

「思ってたとおり、・・・ですか?」

「ん。素でいても俺を好きになってくれそうな、・・・ね」

いつの間にか『俺』。
やんわり弧を描いた眸。嘘っぽさがない。初対面の時から。

「先生は欲張りなんですか?」

お椀からご飯をひと口。
お味噌汁のお椀に口を付けた先生は、意味を尋ねるような視線だけを送って寄越す。

「一人じゃ足りませんか?」

可愛いお子さんだっていそう。

「困ったセンセイですね」

わたしは眉を下げて、小さく笑った。