「三ツ谷さんじゃなくても他の人でも、わたしがナオさんと生きるのが大きな決断に見えるかもしれないですけど、そういうんじゃないんです。わたしのほうが掬ってもらってるんです」

細く笑むと、「・・・そうですか」とだけ短く。

信号待ち。彼が黙ってラジオのボリュームを少しだけ上げた。クリスマスの定番ソングが流れていた。

間を置いて。

「形はどうでも二人が幸せなら・・・十分でしょう」

気遣いと他人事の中間くらいの温度で聞こえた。綺麗ごとを並べられるより誠実だなと思えた。


二人のこと。
これからのこと。
世界が急に目まぐるしく写る。
鮮明に映る。
度が合った眼鏡をやっと手に入れたみたいに。

いつかもし。
レンズが曇って歪んで。
あなたという色を失くしたらその時は。

サヨナラすればいい、コノセカイから。



ひどく穏やかな気持ちがした。ナオさんへのクリスマスプレゼントをあれこれと思い描く。今はただ。この上ない明日の幸せを胸の中にほころばせながら。




Fin