「他に生きる理由がないだけなので。・・・そんな出来た人間じゃないんです、わたし」

きっと彼には理解できないだろうと納得ずくで、単語を連ねてく。

「ナオさんは最初からわたしを必要としてくれました。生きててもいい理由をくれた。ずっと色のない世界が続くだけだろうと思ってました。・・・もしわたしを要らなくなったら消えるだけだし、だから、ナオさんがいないならわたしには何の意味もないって、それだけなんです」

(いら)えはない。でもどうしてか、口から流れ出るのを止める気もしなかった。

「本当はほっとしました、ナオさんが一人でどこにも行けない体になって。わたしを要らなくならないって思いました。・・・不思議ですよね。生きてたいのか、いなくなりたいのか矛盾してる」

フロントガラスの向こうを見晴るかす。
様変わりしていく景色の中。薄く雲を引いた空だけが不変に見えた。