話をしているあいだも、横になったままで上半身には問題がない様子がうかがえた。下半身の麻痺は背中を強打したからだろうと素人の自分でも推測はできる。深い意図はなくその疑問を口にしてみた。

「・・・でも階段から落ちたなんて、どうして?」

急いでいて足を踏み外したのか、それにしても彼らしくないと思うから。

「ついうっかりね。よそ見してた俺が悪いんだ」

さらっと出てきた答えを、どこか最初から用意されてたように感じたのは気のせい・・・?

「ただの事故で入院費も保険が下りるし、自分の荷物は必要なものだけ、今は三ツ谷に預かってもらってる。法的な財産分与もあったから沙喜に迷惑かけることはないよ。・・・母さんにはまだ言えてないんだけどね、もう少ししたら三ツ谷から連絡してもらうつもりだから」

ナオさんはわたしが一番知りたがるだろうことを自分から明かした。他に訊くことがなくなったくらい完璧な答えだった。