「沙喜」

また握り合った手に力が込められた。

「俺からのプロポーズはもっと自分に納得してからにしたい。・・・これからリハビリしてどのくらい機能が回復するのか、全てはそこからのスタートになる。結果がどうでも受け止める覚悟はできてるよ。ありのままの俺で沙喜にプロポーズするから、それまで待っててくれないか」

わたしは一つも漏らさないよう、声ごと胸の中に大事に仕舞い込んでいく。

きっと。思いもつかないくらい悩んだと思う。こうして口に出すのだってどれだけの決心が要ったか。どれだけの辛さを一人きりで抱え込んでたか・・・!

目頭が熱くなったのをぐっと堪え、ぎこちなくても笑んでみせる。

「プロポーズは待つけど、奥さん候補でいいのよね?」

「ん・・・ごめん。・・・ありがとう沙喜」

「わたしはわたしに出来ることをするから。ナオさんは今は体のことだけ考えてて」

「沙喜に言われるのと三ツ谷に言われるのとじゃ全然ちがうな。どんな特効薬より効き目がありそうだよ」

言って、今日初めての笑顔を見せてくれた。