それでも言葉を溜めたままの彼に口を開いたのは三ツ谷さんだった。

「往生際が悪いな吉見。いつものお前だったら新宮さんにここまで言わせないんじゃないのか」

穏やかに、でも真っ直ぐな口調で。

「確かにこれからは何の不自由もない生活というわけには行かないさ。日本は障害を持つ人に対する意識が薄い、生きやすい国とも言えない。俺も出来るかぎり吉見と新宮さんの力になる。・・・もう一度人生を彼女と生き直せるんだ、それ以上の幸運なんかないと思えよ」

「三ツ谷・・・」

「新宮さん」

不意に、立ったままの私を見上げて言う。

「吉見は弱い人間じゃないんですよ、優しいだけで」

「はい」

「見た目よりやんちゃをしてた奴なので、簡単に根を上げたりもしないでしょう。その時は見放してかまわないので、それまで宜しくお願いできますか」

「お前ね・・・」

褒めてるのか貶してるのか分からない言い様に、ナオさんが苦い顔をしたのが可笑しくて。思わず小さく吹き出す。