「沙喜・・・・・・」

言ったきり黙り込んだナオさんを辛抱強く待った。彼の葛藤がうかがえた。いつも迷いのない人だった。

「俺は」

呟きが漏れた。わたしは応えるように手をぎゅっと握り返す。

「・・・いつか沙喜が俺から離れてくのが恐いんだよ。愛情だけでどうにもならなくなる時が必ず来るから。後になって見放されるくらいなら今そうして欲しい。今ならまだ諦めがつく、一人で生きる覚悟ができる。・・・・・・そう思いながら、一生そばにいて欲しくてしょうがない。独りにしないでくれって、みっともなく縋りつきたいんだ沙喜に・・・!」

十分だった。

思わずイスから腰を浮かせ、噛みしめるように目を閉じた彼の頭をそっと腕の中に閉じ込めていた。