無精ひげが生え、手入れなんてできない髪も寝てしまっている。いつもの格好良さは半減してるけど、そんなのはどうだっていい。消えないでいてくれた、ただそれだけで。

縋りつくようにその掌を両手で握りしめ泣いた。

「ッッ・・・、ナオさん、・・・ナオさん、ナオさん・・・っっ」

「うん、ごめん。泣かせてごめん。・・・抱きしめてやれなくてごめんね、沙喜」

わたしは首を横に振りながら泣きじゃくった。謝ってほしいわけじゃない。不安と絶望に押し潰されていたのが一気に解放されただけ。

自分が本当にこの世界の誰にも愛されてないんだと思い知るのが恐かっただけ。

生まれてきた意味すらない存在だったんだと、また思い知るのが恐かっただけ。

「来てくれてありがとう。・・・愛してる沙喜。俺は幸せだね、・・・本当に幸せだよ」

ナオさんの優しい声。優しい温もり。もっと込み上げて、小さく声を上げながら。子供みたいに泣いた。