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 俺、神谷陸は鈴葉海愛ちゃんに恋をしている。



 俺は櫻井の死後、落ち込んでいた海愛ちゃんのためになにができるだろうかと考えた。そうして、俺は櫻井との約束を忠実に守ることにした。とは言っても、俺がこうして海愛ちゃんと優の面倒をみているのは自らの意思だ。

 生まれたばかりの優は、産声を上げ、精一杯にこの世に誕生した喜びを叫んでいた。



 誰かが守らなければ決して生きていくことができない弱い命。本来その役目を担うはずだった、櫻井蓮。しかし奴はもう、この世に存在しない。

 海愛ちゃんの元へ通い出した当初は櫻井との約束を、義務的に守ろうとする感情しかなかった。それが、奴を苦しめた俺の責務だと思っていた。

 今は違う。俺を占める今の感情は、彼女への愛情だ。櫻井から遺のこされた言葉も責任も、全てを抜きにして俺は海愛ちゃんを愛し、櫻井蓮の息子を海愛ちゃんと共に養っていきたいと考えるようになっていた。



 初めて優を見た時、純粋に可愛いと思った。そして同時に可哀相だと思った。この子はこれから父親の存在を知ることなく長い人生を歩むのだ。



 俺に初めて抱かれた優は、途端に大きな声で泣いた。あまりに泣くものだから、俺は嫌われているのかもしれないと思った。けれど、優に邪険な気持ちを抱くことはなかった。

 優が一歳の誕生日、優は初めて俺に自分から抱っこをせがんだ。そうして芽生えた不思議な気持ち。



 この小さな命をこの手で守り、育てたい。



 穢れを知らない優の存在は、俺の心に大きな変化をもたらした。