「僕、少し眠るよ」
夕方、眠気に襲われた僕はベッドに横たわりながら言った。海愛は優しく布団をかけてくれた。
「ちゃんと起きてよ?」
「分かってるよ。じゃあ約束しようか」
絡み合う、小指。
「……約束」
海愛、もう時間みたいだ。ごめんな。僕は最期に一つだけ嘘をついてしまうね。目を閉じたら、僕はもう二度と目覚めないだろうから。
「……海愛、キスして」
これは、最期の悪あがき。最期の時まで君の温もりを感じていたいんだ。だから、お願い。
「えー」
「お願い」
「……分かった」
そう言って、海愛は僕から目を逸らし、頬を赤らめ唇を重ねた。
最期のキスは、僕の中にあった未練を吸い上げていくようだった。
もう思い残すことはない。