もうすぐ、期末テストに
入ろうとしていた六月下旬に
美卯ちゃんは突然、やってきた。

僕はまだ仕事に復帰してなくて
家にいることが多い。

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チャイムがなり、玄関に行くと
そこにはボロボロな美卯ちゃんが
泣きながら立ったいた。

何があったのだろうか?

いや、美卯ちゃんの
この姿を見ればわかる。

中学校でイジメにあっているのだろう……

小学生の頃より悪化してないか?

また、あの{薬}が
必要になるだろうなぁ……

『いらっしゃい』

リビングに通し、ソファーに座らせ
僕はキッチンでハーブティーを淹れた。

『心綺人君』

この様子だと、また
柊和には言えてないのだろう。

『ゆっくりでいいから
何があったのか話してごらん』

さっき淹れたハーブティーを
美卯ちゃんの前に置いた。

『とりあえず、これ飲みな』

凌杏はまだ仕事中だし
話を聞いてあげられるのは僕だけだ。

「中学校って、
違う学区の子も入ってくるでしょう?

それで、入学式の時にパパが
お仕事で来られなくて
ママだけ来てくれたんだけど、
ママが“男性”だから……」

言いたいことはわかった。

僕達みたいな家族は
他にもいるのにどうして
美卯ちゃんばかり
辛い目に遭わなきゃいけないんだ。

善哉家は後三人子供がいる……

下の三人はどうしてくか
僕は見守っいきたいと思った。

『夢卯君と
月卯ちゃんは大丈夫そう?』

美卯ちゃんが
卒業してしまった今、
小学校には双子の二人しかいない。

「二人は大丈夫だと思う。

ママが“男性”ってことが
普通じゃないことを理解してないから……

私も家では不安感を極力
出さないようにしてたけど
“これ”は
誤魔化せないから此処に来たんだ」

確かに、此処までボロボロの姿で
家に帰ったら柊和は訊きたがるだろう。

「心綺人君に二つお願いがあるの」

なんだろう?

「一つはギュッてしてほしいのと
もう一つは此処に泊めて欲しい……」

なんだ、そんな事(苦笑)

『勿論、両方いいけど
お泊まりの方は柊和に
何て説明するの?』

抱き締めるのは今此処でできる。

だけど、お泊まりは
夏休みに入ってからなら
柊和も何も言わないだろうけど
まだ、学校がある今は
帰ってこいと言うだろう。

『わかった。

僕が上手い理由を考えてあげる』

状況は違うけど
イジメにあっていた経験はある。

久崎と遊ぶのを断ったら
翌日からあいつのグループから
嫌がらせされるようになり
一週間後にはイジメに変わった。

「本当に?」

不安そうな美卯ちゃんに頷いた。

『うん』

泊めるのはいいんだけど
一つ問題がある。

『お着替え、どうしようか?』

生憎、うちには下着も服も
当然、男物しかない。

幸い、制服は破れてなさそうだけど
買いに行くにしても
この格好では外に出られない。

『ねぇ美卯ちゃん、
下着とお洋服のサイズと
好きな色とかデザイン
教えてくれる?

お留守番しててくれたら
僕が今から買ってくるよ』

“普通”の家庭なら
男親にあたる僕に女の子が
下着のサイズなんて
教えたくないだろうなぁ(笑)

「いいの?」

僕に買いにいかせるっていうのと
お金のことを心配してるのかな(苦笑)

『勿論。

何も心配しなくていいんだよ』

一つ目のお願いを叶えて
ギュッと抱き締めた。

美卯ちゃんはまだ中学生だし
ちょっと頑張り過ぎな
ところがあるから
たまには、頼ってほしい。

「お願いしてもいい……?」

頼られて嬉しい。

『わかった(ニコッ)

行ってくるから
好きに寛いでてね。

それと、心咲は当分
起きないと思うけど
起きちゃったら
面倒見ててくれるかな?』

「任せといて、
心咲ちゃんが起きたら
ちゃんと面倒は見ておくから」

色々な物の場所を説明し、
あの格好のままじゃ
疲れるだろうと思い、
凌杏のシャツを一枚借りて
美卯ちゃんに着せた。

やはり、中学生の美卯ちゃんには
身長が低い凌杏のシャツでも
ワンピース状態になり引き摺っているから
裾をヘアゴムで縛ってあげた。

「ありがとう」

お留守番を美卯ちゃんに
頼んで家を出た。

一応、凌杏にメールをしておこう。

『《美卯ちゃんが来てるよ。

買い物中だから、僕より
先に家に着いたら話してあげてね》』

これでよし。

序でに、夕飯の買い物もして帰ろう。