僕の実家に行った日が
十二月の終わりだった。

お腹の子は時折、
胎動を感じ元気だ。

クリスマスも正月も過ぎ
一月も半ばになり
三年生は自由登校になった。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

二月になり、
凌杏の実家に行く日が決まった。

『今日はM町までお願いします』

今回も古門さんに
来てもらい、凌杏の実家に向かう。

「今日は近場ですね」

そう、凌杏の実家は
意外な程近かった。

お互い、実家の話をしたのは
今回が初めてだったから
どの辺なのかは知らなかった。

『はい、今日は
私の実家に行くんです』

「そうなんですね(๑^ ^๑)」

三十分程でM町についた。

「私は社に戻りますから
帰りの際は電話してくださいね」

古門さんの台詞に
何時も通りの返事をした。

凌杏は玄関の鍵を開けて
普通に入った。

『心綺人、どうぞ』

僕の手を引いて
洗面所らしき場所に
連れて来てた。

『お母さん、ただいまです』

それから、
リビングらしきドアを開けて
中に声をかけた。

「お帰り、久しぶりね

あら、そちらが?」

僕はお辞儀をした。

『初めまして、
寿々崎心綺人と申します』

手に持っていた紙袋を渡した。

「あら、何かしら?」

『心綺人がフルーツタルトを
焼いてくれたんですよ』

すかさず、凌杏が説明した。

「わざわざ、ありがとうね(๐•ω•๐)

二人とも、座って待っててちょうだい」

僕から紙袋を受け取ると
凌杏の母親はキッチンの方へ。

「お待たせ、心綺人君は
お料理が上手なのね(๑•᎑•๑)」

人並みにはできるけど
果たして、“上手”の部類に入るのかな?

凌杏は何時も
“美味しい”って言ってくれるけどね。

『そうなんです、お母さん‼

心綺人のご飯を食べたら
外食なんてできません』

ぇ!?

まさか、凌杏がそんな事、
思ってたなんて知らなかった(苦笑)

「この子が此処まで言うってことは
本当に心綺人君はお料理上手なのね」

確かに、凌杏は食が細い。

その華奢な身体の何処に
あんな体力と精神力が
あるのか不思議だ。

「心綺人君は妊夫さんなのね(๐•ω•๐)

この子は優しい?」

僕は首を傾げる。

『お母さん、
なんて質問してるんですか(焦/汗)』

こんな慌ててる凌杏は
初めてみるかも(笑)

『優しいですよ(๑^ ^๑)

僕が妊娠してから
料理以外の家のことを
やってくれてます』

めんどくさがりな
凌杏が料理以外の家事を
僕の妊娠がわかった時から
ずっと、やってくれている。

「そう、それならいいの。

最初、奥さんになる人が
“男性”だと言われてた時は
吃驚してしまったけど、
心綺人君はいい子みたいでよかったわ」

これは、
認められたってことでいいんだよね?

「食は細いし、
めんどくさがりだし
何かと手のかかる子だけど
支えてあげてね。

それと、何でも
相談してほしいわ(๐•ω•๐)」

凌杏の母親に認めてもらえて嬉しい♬*゜

夕飯はご馳走に
なって行くことになった。

父親は帰りが遅いらしい。

*✲゚*。 ♪*✲゚*。 ♪*✲゚**✲゚*。 ♪*✲゚*。

『ご馳走さまでした』

時刻は午後七時。

「こちらこそ、お粗末さまでした」

誰かの手料理なんて
久しぶりに食べた。

『古門さん、
すぐ来てくださるそうですよ』

いつの間に電話してたんだ?

『じゃ、そろそろ外に出てようか』

美釉さんにもう一度、
ご馳走さまでしたと告げて
凌杏と一緒に外に出ると
丁度、古門さんが来た。

『ナイスタイミングです(笑)』

「それはよかったです(笑)」

軽~く、でも不愉快にならない
絶妙な流しができるのは流石プロだ。

来た時と同じように
三十分で家についた。

『ありがとうございました』

「いえいえ、またのご利用を」

そう言って古門さんは
会社に帰って行った。

『凌杏』

家の中に入ると
何故だかホッとして
凌杏に抱き付きたくなった。

『おや、どうしました?』

『なんとなく、
抱き付きたくなっただけだよ』

心配そうな表情(かお)で
訊いて来た凌杏に笑顔で応えた。

『なら、いいのですが
不安な事や思う事が
ありましたら、隠さずに
教えてくださいね……』

流石旦那さん、僕の性格を
よく把握している。

外見だけなら僕の方が
タフに見えるだろうけど
実は凌杏の方がタフだったりする。

『うん、隠さずに話すよ』

“恋人”から“ “妻”になったんだから
隠し事はよくないよな。

『ありがとうございます』

お礼を言うのは僕の方だよ。

『僕の方こそありがとう』

こうして、
凌杏の実家訪問は
無事に終わった。