《7日目》

厚い雲が空を覆って、雨が地面を打ち付けていた

残暑と湿気が混ざってなんとも言えないジメッとした暑さが私を憂鬱にさせる


しかも私、傘持ってないし、どうしよう

このまま走って帰れるほどの雨ならよかったのに、今日の雨はニュースキャスターいわく、バケツのような雨なんだそうだ

さすがにびしょ濡れはなぁ


そう思いつつなにも出来ずに玄関に立っていると、後ろから声がした


振り返ると、最近毎日見る顔がいた


「なにしてんの?」


「…いたの?」


「まあな

奈穂、もしかして傘持ってないの?」


私は頷いた

だって、朝はあんなに晴れていたのに


「天気予報くらい見ろよ」


私のスマホの天気予報は雨が降るなんて言ってなかったんだよ


「俺もこれしか持ってねーけど、入ってく?」


すらっと彼がそう言うから、私は当然のごとく頷いて傘の中に入った


だけど後で気づいた


「…これ、相合傘」


「そーらしいな」


そーらしいな、じゃないよ!

あのラブラブカップルがする相合傘だって初めてだってのに、こんな形になるとは…


「初めてが俺ですみません」


「は?別にそんなこといってない」


初めてなんて一言も言ってないのに、國充ったら酷いやつ


「え、俺で嬉しかった?」


至近距離で目をきらきらさせて言われる

顔が近すぎて驚いた


「は?ち、違うから」


あ、噛んでしまった

顔が近いんだよ…


「素直じゃないなぁ」

「…うざ」


至近距離すぎて少し離れたかったけれど、このまま雨に濡れてしまうほうが嫌だった


駅までの辛抱だ…


「せっかくなら楽しもーぜ」


「この状況で?なにを?」


國充ってやっぱり変なやつ


「この状況だからだよ、なかなかねーだろ」


だけどなんとなく、わかってきたかも


「私が困るの楽しんでないよね?」


そう聞くと、國充はニカッと歯を見せて笑って「正解」と言った


もう、ため息しか出ない


「そんな顔すんなって!
ほら、雨の後は虹が出るからそれを楽しみに歩けば楽しいだろ?」


ほんとかなぁ?

まあ、いいか

確かに虹を見れたらいいことが起こりそう


國充を見ると少しオドオドしていて、少し笑ってしまった


「わかったよ」


そう言って私は駅まで國充の傘に入って歩いた

残念ながらその日に虹を見ることは出来なかった