《16日目》


「これ飲む?」


國充から差し出されたのはカフェオレだった
私はそのカフェオレを手に取った


「奢り?ありがと」

「こっちが欲しかったんだけど押し間違えたから奢り」

「なんだそれ」


私は余り物処理班かよ
そう思いつつストローを上から刺した

國充が持っていたのはカフェオレではなく紅茶だった


「でもよかった、奈穂コーヒー派で」


私、コーヒー派って訳でもない
嫌いじゃないけど


「紅茶派?」


そう聞くと、國充は頷いた


「コーヒーとか苦くて飲めない

でも面白いよな、一般的には男がコーヒー飲んで女が紅茶なのに俺ら逆ってな」


確かに

多分これがカフェだったら、多分店員さんは國充の方にコーヒーを持っていくはずだ


「でもこれカフェオレだから甘いんじゃない?」

「いや、コーヒー牛乳くらい甘くなくちゃ」

「お子様だね」


ちょっといじってみる

そう言う私も実は、ストレートティーは苦くて飲めないけど、黙っておくことにした


「飲めなくても生きてける!」


やっぱり國充は面白い

ごもっともな意見だけどお子様な意見に笑ってしまった


「なあ、いつからみんなコーヒーとか飲めるようになるんだろうな」


私もそれは、気になっていた


「ちょうど、この年代じゃない?」


テキトーに答えたけど、大体間違っていないと思う

高校生か、それとも20歳すぎてから?
もしかしたら、中学生から苦いのに憧れて飲んでいる人もいるかもしれない


「そんな無理して大人になろうとしなくてもいいのにな」


…大人、か

どうしてみんな、大人になりたがるんだろうな
大人になったところで、いいことはあるんだろうか


「…大人になりたくなんかない」


私は呟いた
その言葉が聞こえたのか、國充が私の目を見た


「大人になりたくてもなりたくなくても、ならなきゃいけないんだよな、俺たちは」


そう言って、また悲しい顔して笑ったんだ


「大人になりたい?」


聞いてはいけないのかもしれなかったけれど、あの顔を見て、聞かずにはいれなかったんだ


「俺はー
…なりたくないな

ネバーランドでもあったらいいのにな」


その言葉を今でも思い出す