《13日目》
「なぁ、人生で一度は言ってみたいセリフってある?」
「は?」
いきなりどーしたんだろうか
私は今きっと、とんでもない間抜け面をしている気がする
「実はさ、雑誌の話題女優の特集ページに、人生で一回は言ってみたいセリフってのがあって、ちょっと考えちゃったんだよなぁ」
あ、でた雑誌
國充のお得意な雑誌
人生で一度は言ってみたいセリフ、かぁ
今まで考えたこともなかった
「國充はなに考えたの?」
「んー、そーだなぁ
一度は言ってみたいセリフって言ったら、
タクシー乗った時に
“運転手さん、前の車追ってください!”
とかかな」
「なにそれ」
刑事ドラマとかによくあるやつだ
どんな場面で使うのか考えた時、面白くなってついふふっと軽く笑ってしまった
「言ってみたくない?
刑事ドラマとかめっちゃ憧れるだろ!」
國充が目を輝かせて言ってくる
「刑事になりたいの?」
「そーゆーわけじゃないけどさ、シチュエーションが憧れね?」
私は正直よくわからなくて、首を傾げた
「まじかよ」
國充が落胆した顔をした
「それって
…男のロマン、ってやつ?」
「そうそれ!」
いきなり國充が立ち上がって言った
「やっぱりかっこいいものは憧れるよな
奈穂は憧れるものないの?」
憧れるもの、か
「あるにはあるよ」
あるけど、言うのはちょっと恥ずかしい
「お、なになに?」
だけど國充はとても興味津々に聞いてきた
言おうかな、言わまいかな
どうしようか
でもやっぱり、恥ずかしい…
「そんな恥ずかしくしなくてよくね?」
私はばっと顔を上げた
なんでわかったのだろうか
「顔、真っ赤」
國充は自分の顔に手を当てて私に言った
私はそれに衝動的に反応して自分の頬に手を当てた
ば、バレてた!
恥ずかしい
「憧れることがあるのはかっこいいことだよ」
そう言われて、後がなくなった私は息をフゥっと吐いて整えた
「夜景の綺麗なところで、ドレスを着て踊ってみたい」
憧れるのは、舞踏会で運命の王子様と踊るあのお姫様
幸せを感じられる短い時間
絵本でみたそれにずっと憧れている
たとえおとぎ話が儚く切ない物語でも
「いいじゃん」
彼はそう言って口角を上げた
「奈穂ってやっぱり女の子だな」
「は?男だと思ってたの?」
「違う違う
そういうことに憧れるとか可愛いなって思ったんだよ」
「え…?」
可愛いって言った?
國充って、たらしなの?
驚いて一瞬固まってしまった
「調子狂うからやめてよね!」
「本気なんだけど」
天然なのかよ
このまま平常を保てなくなりそうになった私は水飲み行くフリしてその場から逃げた
「なぁ、人生で一度は言ってみたいセリフってある?」
「は?」
いきなりどーしたんだろうか
私は今きっと、とんでもない間抜け面をしている気がする
「実はさ、雑誌の話題女優の特集ページに、人生で一回は言ってみたいセリフってのがあって、ちょっと考えちゃったんだよなぁ」
あ、でた雑誌
國充のお得意な雑誌
人生で一度は言ってみたいセリフ、かぁ
今まで考えたこともなかった
「國充はなに考えたの?」
「んー、そーだなぁ
一度は言ってみたいセリフって言ったら、
タクシー乗った時に
“運転手さん、前の車追ってください!”
とかかな」
「なにそれ」
刑事ドラマとかによくあるやつだ
どんな場面で使うのか考えた時、面白くなってついふふっと軽く笑ってしまった
「言ってみたくない?
刑事ドラマとかめっちゃ憧れるだろ!」
國充が目を輝かせて言ってくる
「刑事になりたいの?」
「そーゆーわけじゃないけどさ、シチュエーションが憧れね?」
私は正直よくわからなくて、首を傾げた
「まじかよ」
國充が落胆した顔をした
「それって
…男のロマン、ってやつ?」
「そうそれ!」
いきなり國充が立ち上がって言った
「やっぱりかっこいいものは憧れるよな
奈穂は憧れるものないの?」
憧れるもの、か
「あるにはあるよ」
あるけど、言うのはちょっと恥ずかしい
「お、なになに?」
だけど國充はとても興味津々に聞いてきた
言おうかな、言わまいかな
どうしようか
でもやっぱり、恥ずかしい…
「そんな恥ずかしくしなくてよくね?」
私はばっと顔を上げた
なんでわかったのだろうか
「顔、真っ赤」
國充は自分の顔に手を当てて私に言った
私はそれに衝動的に反応して自分の頬に手を当てた
ば、バレてた!
恥ずかしい
「憧れることがあるのはかっこいいことだよ」
そう言われて、後がなくなった私は息をフゥっと吐いて整えた
「夜景の綺麗なところで、ドレスを着て踊ってみたい」
憧れるのは、舞踏会で運命の王子様と踊るあのお姫様
幸せを感じられる短い時間
絵本でみたそれにずっと憧れている
たとえおとぎ話が儚く切ない物語でも
「いいじゃん」
彼はそう言って口角を上げた
「奈穂ってやっぱり女の子だな」
「は?男だと思ってたの?」
「違う違う
そういうことに憧れるとか可愛いなって思ったんだよ」
「え…?」
可愛いって言った?
國充って、たらしなの?
驚いて一瞬固まってしまった
「調子狂うからやめてよね!」
「本気なんだけど」
天然なのかよ
このまま平常を保てなくなりそうになった私は水飲み行くフリしてその場から逃げた