《11日目》

はぁ

私はため息をついた

手には先生から配られた風に揺られる紙を握っていた
私はそれを再び見つめる

…だめだった、、。

そう思いながら顔を上げると、國充と目が合った

「うわ、ひっでー顔」

彼はそう言ってニヤニヤしながらこちらへ向かって歩いてきた

どうせいつもひどい顔ですよ
てかそれどころじゃないんだよこっちは


「それ、成績表?」


私の持っている紙に気づいた彼は、指さして聞いてくる

私は頷いた


「そーゆーことか

そんな酷かったの?」


私は再び頷いた


「酷すぎて話にならない」


再びため息をついた時、國充がサッと私の手から成績表を奪い取った!


「ちょっと!」


「ため息つくと幸せが逃げるぞ!」


「は?なにそれ?」


「よく言うだろ?」


「言わないし
…てかそれ返して」


「そんな顔するからもっと酷いのかと思ったら、赤点どころか平均以上じゃねーか」


國充から返ってきたそれを再び見た

確かに、赤点は一個もない
だけど、それじゃダメだった

「…ダメなんだよ
許してくれない」


私は俯きながら吐き捨てるように言った

私の成績は、全て平均的だった
少し波があったから、総合が平均以上だっただけで


「誰が許してくれない?」


「…親」


「は?意味わかんねー」


「私の家はそーなの
全部評定4が取れる65点以上じゃないと、親は許してくれなくて、あれこれ言われる」


私がテストが嫌いな理由は、これだ

別にただ受けるだけならいつもの学校より雰囲気は静かだし、早く終わるから嬉しいものだ

だけど、それには結果が必ずついてくる


「あれこれ言われるだけなら、気にしなくちゃいいだろ」

「気にするよ!」


みんなに言われてきた

“言われだけなら気にするな”

だけど私には、それができない


「ずっとずっと気にしなくちゃいいいからって言い聞かせてきたの

だけど心はいっぱいいっぱいで、考えちゃって謝んなくちゃ何か言わなくちゃって思ってばっかりで

どーしたらいいのっ?

気にしないなんてこと私にはできないの!

気にしないことができるならとっくにやってる!」


思わず込み上げてくるものを堪えたくて必死になって叫んでしまった

こんなに話したの、いつぶりだろう


叫んで荒げた息を落ち着かせるために息をすぅっと吐いた時、目から一粒零れ落ちた


「ずっと我慢してたんだな」


全部聞いてくれた國充は静かにそれだけ言って頭を優しく撫でてくれた


「奈穂」


突然彼に名前を呼ばれて私は顔を上げた


「ハグしよう」


「は?」


この状況で、こいつは何を言ってるのだろう


「ハグすると、ストレスが60パーセント軽減されるんだと」


なにその嘘みたいな情報

多分、どこかの雑誌で読んだのかな


「ほら、おいで」


まあ、いいや

國充が私のことを気遣ってくれたことを信じてみることにした

私は腕を広げて待っている彼の体に飛び込んだ

それはとても温かくて、締めつけられて、
そして

今までの気持ちがスーッと消えていく不思議な力を持っていた