「わーっ!」

宗助が登場したとたん、歓声があがった。

宗助はマイクスタンドの前に立つと、
「おいっす!」

声をかけた。

歓声が大きくなる。

「こんな寒い中、ありがとさん!

みんな、楽しんでってくれよ!」

「宗助ーッ!」

「玉ちゃーんッ!」

熱い歓声に、宗助は目頭が熱くなるのを感じた。

今日のセットリスト全15曲は、自分がヴォーカルを務めた曲にした。

ここで自分が泣いたらライブは終わりになる。

泣くのはライブが終わった後だ。

宗助は自分に言い聞かせると、後ろにいる桑田に向かって右手をあげた。

「ワン、ツー、スリー!」

桑田のドラムで始まった1曲目は、ベイビー・スターダストの8枚目のシングル『High Times』だった。