千恵美がボールペンを見せたとたん、山崎の表情が変わった。

「ただのボールペンじゃないことに気づいたみたいですね」

無表情のまま言った千恵美に、
「わ…渡しなさい!

そのボールペンをこっちに…!」

慌てた表情の山崎が彼女に飛びかかろうとしたその時だった。

「危ない!」

テナーの渋い声が2人の間に割って入った。

山崎との間を割って入るように、千恵美の前に誰かが立ちふさがった。

見覚えのあるその後ろ姿に、
「――宗助…」

千恵美は呟くように言った。

「山崎欣次郎さん」

宗助の隣にいた夏々子が山崎の名前を呼んだのと同時に、彼の前に何かを見せた。

「あなたと息子さんの会話、全部聞かせてもらいました」

microSDカードだった。