クラッキング(他人のコンピューターに不正に侵入するなどの行為)は夏々子の得意技だ。

「――あった、この人よ」

夏々子が画面で指差した顔写真を瑛太と桑田は覗き込んだ。

「住所はT区の3丁目にあるマンションの102号室か」

桑田は画面に書いてある個人情報を読んだ。

「今夜辺りに忍び込んでボールペンを…」

そう言って張り切った夏々子に、
「でも、それがあるとは限らねーだろ」

瑛太がさえぎるように言った。

「どうして?」

聞き返した夏々子に、
「そのボールペンが仕事場の方に保管されているって可能性もあるってこと」

瑛太は答えた。

「あー、そう言う可能性もあるか…」

夏々子はやれやれと言うように椅子にもたれかかった。