宗助と出会った当時、自分は8歳だった。

彼は28歳と、自分よりも20歳年上だった。

「ナナコちゃん?」

自分の名前を呼ばれ、夏々子は視線を向けた。

「ウィキペディア見て思ったんやけど、ナナコちゃんって結構個性が強い字を書くんやね。

夏に踊り字に子で、“夏々子”って」

そう言ったのは荒畑だった。

「夏生まれなんです」

夏々子は一言そう言って答えた。

「6月だと…夏生まれに入るんやか?」

荒畑がそう言って徳重と本山に視線を向けた。

「暑いから入るんじゃない?」

「よくわかんね」

徳重と本山は首を傾げて答えた。

――“夏々子”、って言うのはどうだ?

名前すらなかった自分に“夏々子”と命名してくれたのは、宗助だった。