嫌な時間ではなかった。
むしろ、嬉しいくらい。
この人の腕の中に収まった途端、今までのつまらない抵抗や意地なんて、どうでもよく思えてくる。
素直な気持ちが次々と溢れてくる。
澪にとってこの場所は、唯一…自分の本音が表せる場所のような気がした。
稚尋の昔と変わらない栗色の少し癖のある柔らかい髪。
それが窓から差し込む夕日に反射して、キラキラと輝いて見えた。
そう。
二人の柔らかな時間を表すかのように。
「………澪…」
そんな日だまりの中、澪の耳元に愛しい声が響いた。
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