私はデザイナーとして頑張りたいと、強い決意を社長に伝えた。

「うん、よろしく。一緒に会社を大きくしていけたらいいね」

 高城先輩の表情からは、まだ混乱した様子が伺えた。

「愛花ちゃん、いつからこの会社のデザイナーとして働いていたの?」

「大学卒業後からです。でも、高城先輩の会社だなんて知りませんでした」

「俺も愛花ちゃんがデザイナーとして、うちの会社で働いてたなんて知らなかったよ」

 室内の時計を見た瞬間、ハッとした。

「あの、高城社長。大切な会議の時間が迫っていますので、申し訳ありませんが失礼しさせて頂きます」

 私はソファーから立ち上がり、高城社長に向かって一礼した。

「分かったけど……社長って呼び方だけは、辞めて欲しいなぁ」

 えっ……でも……他にどんな呼び方があるんだろう。

「それでは、何とお呼びしたら良いのでしょうか?」

「恭介でいいよ」

 えっ!? 社長を名前で呼び捨て?そんなの……出来るわけがないよ。高城先輩って、意外にイジワルなのかな?

「恐れ入りますが、それは無理です」

「どうして……俺たち顔見知りなんだから、別にいいじゃん」

「顔見知りとはいえ、社長を呼び捨てにするなんて……私には出来ません」

「じゃあさ、仕事の時は社長でいいけど、会社を出たら名前で呼んでよ」

「……高城先輩で許して頂けませんか?」