社長の言葉に従い、私はソファーに、腰を下ろした。
「いきなりこんな事、言われても困るのは分かってるんだけど……」
「……はい」
「急な話で申し訳ないんだけど、明日から愛花ちゃんに、俺の秘書になって貰いたいと思ってる」
えっ!私が社長の秘書?何で私が社長の秘書にならなくちゃいけないの?
私の頭の中は、疑問符でいっぱいになった。社長はいきなり何を言い出すんだろう。
でも……冗談を言ってるようには見えなくて社長の目は真剣そのものだった。
私はビックリして目が丸くなり、ただ呆然とするばかりだった。そりゃあ、社長秘書をやりたくないのかって聞かれたら、やってみたい気持ちは当然あるんだけど……夢だったデザイナーへの一歩を踏み出したばかりなのに、社長の秘書になんてなれるはずがないので答えはすぐに出た。
「私はデザイン部に所属しているので、申し訳ありませんが、社長秘書にはなれません」
「えっ!そうなの?でも……秘書は女の子憧れなんじゃないの」
「……えっ?」
「実はこの前……愛花ちゃんが営業部に出入りしている所を見掛けたから、営業部の所属だとばかり思って秘書に誘ったんだよ」
営業部には用事がない限り出入りしてないんだけど、そんな勘違いをしたなんて……私はデザイナーとして会社に貢献したい気持ちが強い。
だから社長が高城先輩だとしても秘書になる気はない。
「社長の秘書にはなれませんが、会社の期待に応えられるデザイナーを目指して頑張りますので、よろしくお願いします」