そろそろ皆の所へ戻らなくちゃ。

「高城先輩、私……中へ戻るので失礼します」

「あぁ……分かった。愛花ちゃん、かなり飲んでたみたいだから……今からは、あんまり飲みすぎないように気を付けて」

「分かってます」

私は高城先輩に一礼してみんなの元へ向かった。

「愛花……遅かったね。村上と何かあった?」

「はっ!? 何で……」

「だってさぁ……村上のヤツ愛花を追い掛けて行ったのに、戻ってきたら見ての通りなんだよ」

弥生に言われて村上を見ると、まるでヤケ酒でもあおるかの様にビールをイッキ飲みしてはすぐに次を注文していた。

もしかして、高城先輩にキスを邪魔されたから?まさかね……そんなの有り得ないよね。

みんなは村上の暴走を止めるのに、必死になった。

その一方で弥生は高城先輩が座ってるカウンター席を見て、うっとりとしている。

「ねぇー愛花、社長はカッコイイの分かるけど、社長秘書の久我山さんもカッコイイと思わない?」

「……そっ、そうだね」

「実は私……久我山さんに一目惚れしたの」

「……また始まったよ。弥生の恋愛病」

「そんな呆れたように言わないでよ。愛花が恋に冷めすぎなんだって……」

「そんなことないよ。私にだって、好きな人くらい……」

そこまで言うと、ハッと我に返り思わず口を両手で押さえた。

「ふーん、愛花……いつの間に好きな人出来たの?」

売り言葉に買い言葉で、つい言ってしまった。

「べっ、別にいつだっていいでしょ。だって、弥生には関係ないんだから」

私は再びカウンター席に目を配ると、先程までは姿が見えなかった、この前目撃した彼女らしき女性が来ていることに気付いた。

楽しそうに話している2人の姿が目に移るのが辛くなり、この場にいる皆に悪いと思いながらも私は帰ることにした。

お店を出てしばらく歩いていると、後ろから名前を呼ばれた。

「愛花ちゃん、送るよ」

「えっ、恭介さん?何で?」

「愛花ちゃんが帰るのが見えたから、送りたくて追いかけて来ちゃった」

「あの……私より、彼女を送らなくて良いんですか?」

「はっ、彼女?」

「さっき一緒にいた女の人、恭介さんの彼女じゃないんですか?」

「違うよ。彼女は俺の第2秘書で、久我山の彼女だよ」

「へっ、そうなんですか?てっきり恭介さんの彼女だとばかり思っていました」

「愛花ちゃんも見ただけで誤解してたって事だね。何か俺達って早とちりな所似てるね」

恭介さんに彼女は居なかったんだ……私は誤解して勝手に思い込んでいたたけだったと知り心から安堵した。