チョコレートキス


高城先輩に彼女がいることくらい、分かっていたはずなのに……自分でも驚くほど激しく動揺した。

先輩とアドレス交換したくらいで、浮かれてた自分が恥ずかしくなった。

それと同時に、期待した自分がバカだったとも思った。

そして……気が付くと自然と目から涙が溢れてきた。

高校生の時から、ずっと好きだった訳じゃなく
今の高城先輩にもう一度恋をしたんだ。

恋だと自覚した途端に、失恋するなんて……運が悪すぎる。

やっぱり、私と高城先輩は結ばれることは無いんだと痛感した。

きっと……何度、出逢っても、永遠に私の片想いでしかないんだろうな。

そう思った時だった。誰かにポンっと、肩を叩かれた。

後ろを振り返ると、立っていたのは、営業部に所属している、同期の村上朝陽(ムラカミ アサヒ)だった。

同期イチの出世頭になるってくらい、優秀で上司からの信頼もかなり厚い。

「えっ、村上……何か用?」

「何か冷たい言い方だな」

「ゴメン……別にそんなつもり無かったんだけど」

「分かってるって。急なんだけど……今度の週末に同期会やることになったんだけど愛花も来るか?」

同期会か……本当久しぶりだ。

最近は同期会なんて、すっかり御無沙汰になってたから、せっかくの誘いだから行こうかな。

やっぱり、私たち代の同期は凄く仲が良い。

この絆はこれから先も、ずっと大切にしていきたいと思ってる。

「うん、行く」

「よし、全員参加だ。やっぱり俺たちの代は、みんな仲良しだな」

私達は入社して5年になるけど、たまに同期の仲間と飲みに行くことがある。

同期会って名を付けて集まるのも楽しい。

先輩達からは、そこまで仲の良い同期なんていないってよく言われる。

先輩たちは、自分の出世しか考えらていないから、そういうことしか言えないんだと思う。

同期の人間はライバルでしか思ってるから……よほど仲良くなきゃ、飲みに行ったりはしないらしい。

出世したい……そういう気持ちなら、私たちにだって当然のようにある。

でも……ただライバル視するだけでは、良い物は生み出せないと考えている。