プレゼンが通過してからは慌ただしい毎日を過ごしている。
高城先輩から食事や飲みに誘われても、毎日深夜まで残業に追われているため、断わりをいれる日が多い。
断わる度に申し訳ない気持ちで胸が締め付けられる思いをしている。
だけど……忙しいのもあと僅か。新商品の発売まで一週間を切った。
私がデザインしたバッグが店頭に並ぶのが、待ち遠しい。
発売初日には、私もショップへ出向いて宣伝活動することになっている。
今までに無い経験をすることもあり、期待と不安と喜びの感情が入り交じっている。
今日は久しぶりに、早く仕事が終わった。
とはいえ、既に時刻は午後9時を回ろうとしている。
昨日までは、日付が変わるか変わらないかくらいまで残業してたから、こんなに早く帰れるんだって喜びは大きかった。
ウキウキしながら、エントランスを出ようとした時だった。
エントランスの外に、高城先輩の姿が見えた。
声を掛けようと急いで外へ出ようとしたら、高城先輩は、私の知らない女性と一緒にいた。
彼女がいるんじゃないかって、ずっと思っていた。
だけど……こんな風に現実を突きつけられ、私の心は予想以上に激しいショックを受けた。
会社からの帰り道、高城先輩の隣にいる女性が誰なのか、とても気になった。
恋人がいると分かっても、高城先輩は憧れの王子様であることに変わりはない。
私は先輩のことが好きなんだと、はっきりと自覚した。
恋を自覚した瞬間に失恋だなんて、やっぱり高城先輩は憧れの王子様でしかないことを痛感したのだった。