高城先輩は、ひと一息ついて口を開いた。
「この前は、いきなり俺の秘書になって欲しいなんて言って申し訳なかった。ちゃんと謝ってなかった気がしたから、愛花ちゃんに謝っておきたくて」
「えっ!? 私、全然気にしていませんので、先輩……頭上げてください。本当に気にしていませんから」
そう言っても、城先輩は頭を上げてくれず、話を続けた。
「本当に失礼なことしたと思ってる。愛花ちゃんは夢を叶えてデザインの仕事してるのに……」
「高城先輩だってお父さんがいきなり倒れて大変だったんですから。お願いです、頭を上げてください」
やっと頭を上げてくれた高城先輩の顔を見たら、やっぱりカッコイイな……と思った。
初恋の人が、目の前にいるなんて……未だに信じられない気持ちでイッパイだ。
初恋は叶わないってジンクスがあるけど……もしかしたら、これって運命では?
つい、そう思いたくなってしまう。
「そう言えば、これから会議だよね」
「はい」
考えごとをしていたため、返事を焦ってしまった。
「俺も出席するから、プレゼン頑張ってね。愛花ちゃんの案を応援するから」
「はい、頑張ります」
今日の会議は、新商品のデザインを重役の前で発表する。
今までプレゼンで、あんまり良い結果を残せたことがないから、今回は絶対に頑張りたい気持ちが強い。
先輩からの励ましで目覚めに感じた、寝不足と二日酔いによる頭痛が何処かへ吹っ飛でしまった。
先輩から激励を受けて、何がなんでもプレゼンを通過させると気合いを入れ直し応接室を後にした。
デザイン部にまとめていたプレゼンの資料を取りに戻った。
私だけではなくプレゼンを通過させるのに必死になっているのはみんな一緒だ。
今日は今までなく、勝ちたい気持ちが強くある。
私はみんなより一足先に会議室へ向かった。
会議室には、まだ誰も居なかったので資料の準備を始めた。
テーブルの上に、資料を配置、プロジェクターを準備し、参加者が揃い次第、すぐに会議を始められるまでの段取りを終えた。