明日も仕事があるし、今日はそろそろ帰ろうということになった。

 高城先輩が会計を済ませて一緒に店の外に出ると、店の前でタクシーを拾ってくれて、先輩とはそのまま別れた。

 私はもう少しだけ高城先輩と一緒にいたかったな……という気持ちがあった。

 なんとなく真っ直ぐ家に帰る気になれなかった私はタクシーの行き先を、自宅前ではなく親友である真央の家の住所を告げた。

 こういう時に相談するのは、奈央しかいないと思ったからだ。

 真央は時間が不定期なショップ店員だけど、さすがにこの時間だから帰ってるはずと思い、電話連絡もせずに向かっている。

 何よりも最近の真央は私達との付き合いが悪いから、ちょっと困らせたいって気持ちがあって連絡することなく向かうことにした。

 真央の恋愛事情に探りを入れるためにも、ビックリさせたくて連絡せずに来てみたけど、インターホンを押しても反応がなかった。

 せっかく来たけど真央は留守で空振りみたいだ。真央に会いたくて来てみたのに留守だなんて本当にツイてない。

 諦めて帰ろうとエントラスを出ようとしたら、真央が現れた。

「愛花? 愛花だよね」

「うん、久しぶりに真央に会いたくて、マンションまで来てみたんだけど、留守だったから、諦めて帰ろうと思ったところなんだ」

「間に合って良かった。本当はこの前、飲み会に行きたかったんだけど、毎日残業だから行ける状態じゃなくて……」

「大変なんだね。そろそろ夏のバーゲンセールの時期だもんね。もしかしてその準備に追われてるの?」

「うっ、うん、まぁね。せっかく来たんだから少し休んで行きなよ」