そんな先輩が、小声で何かを呟きだした。

「やっぱり、愛花ちゃんには彼氏いるんだね」

 もしかして……すぐに否定しなかったから、先輩は勘違いしたってこと?

「えっ、私、彼氏なんていませんけど……」

「それなら早く言って欲しかったな。否定しないから、愛花ちゃんに彼氏がいると思って落胆したんだよ」

「もしかして先輩が落ち込んだように見えたのは、私のせいなんですか?」

「そうだよ。彼氏いないならいないって、即答して欲しかったよ」

「……ごめんなさい」

「まぁ、フリーなら安心したよ。彼氏がいたら、今夜みたいに気軽に飲みに誘えないなって思ったから。安心したよ」

 気軽に飲みに誘えるか……そういうことだったのか。彼氏がいるって、妬いてくれたじゃなかったのか……そう思うと少しガッカリしてしまった。

 私のこと恋愛対象として見てくれたのかなと……そんな淡い期待を抱いた自分を本当にバカだと思った。

 受けたショックは自分でも驚くくらい、予想より遥かに大きかった。

 私……何で、こんなにショックを受けてるの?動揺してるのを悟られないよう、取り繕うことに必死になった。

 そして……高城先輩には、彼女がいるのかな?高城先輩と一緒にワインを飲みながら、私は頭の中でそればり考えていた。