そう考えると、胸がチクリと傷んだ。高城先輩って、遊び人なイメージは全くなく見た目も性格も好青年そのもので、そういう所は高校時代から変わってない。

 高城先輩に連れて来られたお店はとてもオシャレなバーだった。

「高城先輩、とても素敵なお店ですね」

 素直に思ったことを口にしたら、高城先輩は何故か不機嫌な表情を浮かべた。

「愛花ちゃん。先輩じゃなく……恭介って、呼んでくれないか」

「えっ!?」

「会社では社長でも先輩でも構わない。今はオフなんだから、恭介って呼んで欲しいんだ」

「……」

 そんなこと言われても困る……付き合ってもないのに名前でなんて呼べるはずない……。

「そんなの無理です。呼び捨てなんて出来るはずないですよ」

 高城先輩……もしかして私に意地悪してるのかな?

「恭介さん……でも、いいから」

「高城先輩……ごめんなさい。やっぱり私には無理です」

「愛花ちゃんって、もしかして彼氏いるの?」

「えっ!?」

 彼氏なんて居ないけど、無理なものは無理。やっぱり、高城先輩は私を困らせて楽しんでるだけであることを確信した。

 そんなことを思いながら、先輩の顏を見ると……酷く落ち込んでいるように見えた。先輩はどうして、そんな悲しそうな顏してるの?