高校時代の高城先輩に、想いを寄せている女子は多かった。社内で社長を見掛ける度に、キャーキャー騒いでばかりの女子社員がたくさんいる。
今も昔もこんなにモテるなんて……初恋を成就させるのは、かなりの難関になりそうだ。私にとって高城先輩は、あの頃から憧れの王子様。
そんな人から秘書になって欲しいと言われ、本当は嬉しかったけど……デザイナーになる夢を、諦めたくない気持ちの方が大きかった。
迷うことなく先輩からの申し出を断ったけど、少しだけ勿体なかったかもしれない……そういう気持ちが生まれていた。
やっぱり高城先輩は私には永遠に手の届かない……憧れ王子様でしかない?
憧れるのは私の勝手だけど……やっぱり高城社長には、彼女か奥さんがいるんじゃないかなって思ってしまう。
もし……奥さんか、彼女が居ないとしても、それに近い存在の女性は絶対にいると思う。
例えば政略結婚のための婚約者とか……だから私なんて……相手にされるはずない。自然とそう思っていたが、ふと我に返った。
高城先輩は初恋の人だけど……別に今でも好きな訳じゃないのに。
これじゃあ他の人に聞かれたら、まるで高城社長に好意を寄せてるみたい聞こえるじゃん。
なんで相手にされるはず無いとか、バカみたいなことを考えてるんだろう。
「はぁー」
私は思わず、深いため息を漏らした。ため息を漏らしながら、昨日の飲み会での会話を思い出した。
芹菜と涼子に、言われたことが気になってしょうがない。
『その社長が愛花を秘書にしたいなんて……愛花のことを好きなんじゃない』
2人の発言に私はそんなこと有りえないと、笑い飛ばしたけど。
相手は社長だし……高城先輩が、私のことを好きだなんて……そんなの絶対に有りえない。
私が高城先輩を好きだったのは、紛れもない事実なんだけど。それにしても……社長から私を秘書にしたいって言われた時は、本当にビックリした。
でも、なんでだろう?気になるけど、社長に直接聞く勇気はなかった。