そんなつもりは全く無いのに……涼子には今の話がのろけ話に聞こえたのかな?
「別にのろけてないよ。こんな偶然もあるんだなって思っただけだもん」
「もう2人とも、喧嘩しないで楽しく飲もうよ」
今まで黙っていた芹菜が、私と涼子の言い合いを止めに入った。
「それもそうだね」
せっかく久し振りに集まったんだから、楽しく飲まなくちゃ。
「この再会を単なる偶然で終わらせるか、運命になるかは愛花の気持ち次第なんじゃない。もう一度、社長に恋する可能性ゼロでは無いんでしょ」
高城先輩との再会を偶然で終わらせるか、運命にするかは……私、次第か?今の芹那の言葉は、私の心に重くのしかかった。
高校時代に私は『好き』のたった二文字が言えなかった。たった二文字だけど、凄く勇気のいる言葉。言いたいのに言えなくて、何度も涙を流しては後悔ばかりしていた。
先輩の近くにはいつも美人の幼馴染みがいたから、私なんて眼中にないと思っていた。だから先輩と時々話せるだけで、充分満足していた。
でも……先輩が卒業してから、告白すればよかったと何度も後悔した。気持ちを伝えていれば、諦めがついたかもしれないのに……先輩が卒業してから、そう思った。
今は彼氏もいないし……芹那の言う通り、もう一度高城先輩を好きになる可能性……ゼロではない。
先輩との再会を偶然じゃなく、運命にしたい……私は心から強くそう思った。