定時で仕事を終わらせ急いで行きつけの居酒屋へ向かうと、須藤涼子(すどうりょうこ)北河芹那(きたがわせりな)が私の到着を待っていた。でも竹崎真央(たけざきまお)の姿はまだ見えなかった。

 真央は勤め先のアパレルショップではカリスマ店員と呼ばれている。私が勤めているZOPとは、比べものにならくらい国内最大手のブランド。

 海外のブランドとコラボしたりと、長年に渡りアパレル業界トップの業績をひた走っているので、うちのブランドは足下にも及ばない。

 真央は今日の飲み会に、来れるか分からないって言ってたから来ない可能性が高い気がする。真央にも会いたいけど仕事なら仕方ない。私達は3人で、先に始めることにした。

 飲み始めてから私は今日の出来事を2人に話した。そしたら2人とも予想外の反応をした。

「それって……偶然って言うより運命なんじゃない」

「わたしも涼子の意見にに同感だよ。初恋の人に、再会するなんて滅多にないことじゃん」

「えっ、運命?」

「案外……社長も高校時代に愛花のこと好きだったんじゃないかな? それに……再会していきなり、ソファーに押し倒して、下の名前で呼び捨てにして欲しいなんて……普通に考えて好きな女にしか言わないでしょ」

「そうかな?」

「そんなの当たり前。もし両想いなら、相手が社長なら玉の輿じゃん。愛花が羨ましいよ」

 玉の輿って、まるで私と高城先輩が結婚するかのような発言をしてるし……2人で勝手な妄想して楽しまないで欲しいな。

「涼子ったら、なんか勘違いしてるんじゃない。私、今でも先輩のこと好きだなんて、一言も言ってないんだけど……」

「えっ、それは無いでしょう。初恋の人に再会したって、嬉しそうに散々のろけたくせに」