でも夢じゃない……高城先輩は私の目の前にいる。あの頃より、手の届かない存在になってしまった事実に、少なからずショックを受けてる自分がいた。

 社長に一礼して応接室を出た途端に、思わずため息を漏らさずにはいられなかった。

 あぁ……本当にびっくりした。まさか……高城先輩があんなことするなんて、思いもしなかった。

 さっきは、高城先輩に心臓の加速する音が聞こえるんじゃないかって、思うくらいドキドキしちゃった。

 今の私……絶対に顔が真っ赤だ。頬が熱を帯びて、熱くなっている。

 私に覆い被さっていた時の高城先輩も、僅かに頬が赤くなっていた気がする。

 高城先輩は余裕があるのかと思っていたけど、もしかすると……本当はあんまり余裕が無かったのかな?

 私は応接室を出て会議室へ向かった。なんとか会議に遅刻せずに済んだ。

 短時間の会議は終わり部署へ戻り、プライベート用の手帳を開いてみた。

 今夜の予定は『女子会』と書いてあった。大学時代のサークル仲間と卒業してからも付き合いは続き、たまに飲み会をしている親友が3人いる。

 今日の出来事をみんなに話したら、馬鹿にされるかな?いい歳してドラマチックなこと妄想してんじゃないよ……とか言われそう。

 私は今でも、高城先輩を好きな訳じゃないけど……再会出来て嬉しかったのは紛れもない事実。

 笑われるのを覚悟で、私はみんなに話そうと思った。みんなに会いたいから早く夜にならないかな。私はそんな気持ちで、今日の仕事を片付けた。