――十二月中旬、小雪の舞う季節になった。

 私と保が知り合って、すでに半年が経過していた。

 私の部屋でいつものように、二人でテレビを観ながら寛いでいた。

「なぁ雫……」

「なぁに?」

「結婚しない?」

「えっ……?」

 私は突然のプロポーズに驚く。
 テレビのボリュームが大きくて、保の真意が聞き取れなかった。

「……今、なんて言ったの?」

「だ、か、ら、結婚しよう」

「それ……って、プロポーズなの?」

「プロポーズに決まってるだろ」

「ふつう、もっとロマンチックなシチュエーションとかあるんじゃないの?それに、まだ私達付き合って半年だよ?」

 ソファーで寝転んでテレビを見ながら、プロポーズだなんてありえないよ。

 女子は幾つになっても、素敵なシチュエーションを夢見てるんだからね。

「シチュエーション?そんなものないよ。俺と結婚するのが嫌なのか?」

「……いやとは……誰も言ってない」

「じゃあ、オッケーなんだな?」

「……う……ん」

 私はコクンと頷く。

「オッケーなんだ!よし!年内に入籍しようぜ」

「えっ?年内?それ本気なの?」

「挙式はさ、海外で二人だけでやろうぜ。雫の家族はいないし、俺の身内も親父と怜子だけだしな」

「……うん。いいけど、本当に年内に入籍するの?」

「クリスマスイブに入籍しよう。俺、雫と早く夫婦になりたい。結婚したら、堂々と子作り出来るだろ」

「はっ……?子作り?」

「そうだよ。早く子供が欲しいな」

「保が……パパになるの?」

 俺様で自己中な保が、子供好きだなんてちょっと意外。

「俺は一人っ子だし。たくさん子供が欲しいんだよ。雫にいっぱい家族作ってやるんだ。もう一人ぼっちだなんて思わせない」

 私のために……
 そんなことを考えてくれていたんだね。

「いいよ。保の子供をたくさん生んであげる」

 私は笑って答える。
 一人っ子の保が寂しくないように、保にも家族をいっぱい作ってあげる。

「親父は区役所の戸籍課なんだ。二人の休みがイブに重なるといいな。もし休みじゃなかったら、半日有給とろうよ。夜間じゃなくて、日中区役所に行きたいんだ。イブに入籍しよう」

「うん、いいよ。シフト頼んでみるね」

「じゃあ、誓いのキスを」

「えっ?今?ここで?」

「そうだよ。誓いのキスだよ」

 私は保の唇に、自分の唇を重ねた。
 プロポーズを受けたあとのキスは、いつもより神聖な気がする。

「じゃあ、今から、子作りにチャレンジだ」

「……何でそうなるかな。まだ、入籍してないでしょう」

「入籍はクリスマスイブだろ。あと十日なんだから、関係ないよ」

「そうかなぁ……」

 保に抱きすくめられ、私は保の腕の中。

 私にも家族が出来る……。

 もう……一人じゃないんだね。