―あれから三ヶ月―

 保は夜勤以外、私のマンションに泊まるようになった。二人とも夜勤があり、擦れ違うことも多く、一緒に食事をするのは一週間で数日あるかどうかだった。

 私は未だに保のマンションには行った事がない。

 別に、理由はないけど……。
 保がいつも私のマンションに来るし、料理を作ったりするのは、自分のキッチンの方が使いやすいから。

 三日振りに二人の生活サイクルが一致し、私もソワソワしながら保を待つ。

 ――午後七時過ぎ、チャイムが鳴り私は玄関に走る。

 ドアを開けるなり、保が私に抱きついた。

「いらっしゃ……」

「雫!逢いたかったよ!」

 そう言うと、決まってキスの嵐。
 そして、必ずベッドへ直行。

「保……先にご飯食べるとか、お風呂に入るとか……順番あるでしょう……」

「これが俺の優先順位。まず、雫を抱く。なにか問題ある?」

「いや……べつに……」

「じゃあ、いいじゃん」

 保は満面の笑みで、ニカッと笑った。

「だって、まともに会ってなかったんだよ。まずは雫のチェックしなきゃな」

「私のチェックって?」

「お前が浮気してないか、体の隅々までチェックするんだよ」

「わ、わ、何、言ってるのよ……」

「だって、雫は可愛いし、三日もほっとくと誰かにとられそうでさ」

「バカみたい。私はそんなに軽い女じゃないよ」

 ……と言ったものの、保とは軽率だったな。
 病院でキスして、再会していきなり男女の関係に……。

「保だけだよ……。心が許せるのは……」

 私にとって……
 保との時間は、幸せな時間。

 保の腕の中は……
 心地いい……私の居場所。

 好きで好きで……堪らなく好きで……。

 溺れてしまったのは、私の方かもしれない。

 ◇

 ベッドで愛し合ったあと、二人でシャワーを浴び、パジャマ姿で夕食を食べる。

「なあ雫。もう付き合って三ヶ月だし、そろそろマンションの鍵を交換しない?」

「鍵……?」

「合鍵持ってたら、夜勤の時とか便利だし、なんとなく安心するだろう?俺の……」

「俺の?」

「俺の女……みたいな。なっ」

「ぷっ……」

 俺の女って、なに?
 そんなに合鍵が欲しいの?

 照れ臭そうに笑った保の顔が可愛くて、思わず吹き出す。

「なんだよ。ムカつくな」

「だってさ、合鍵がなくても、私は……保の彼女だよ」

「まじ?」

 保はデレッと目尻を下げ、嬉しそうに私を見つめた。