「あら、もしかしてちょっと引いてる?」
怜子が私の顔を、覗き込んだ。
それは……引くでしょう……。
「いえ……とてもお似合いです」
取りあえず愛想笑いする。
「まっ、普通は引くよな。親父は公務員だし、区役所勤務だし、お堅い職業だし。なあ親父、役所でもドン引きだったよな」
保が笑いながら、父親を見た。
保の父親は苦笑いしながら、ウイスキーを口に運んだ。
「保、私達の話はもうよさないか……」
消え入りそうな声で、ボソッと呟く。
口数も少なく生真面目な感じの父親が、どうして彼女と結婚したのか不思議でならない。
「でも、人を好きになるのって、年齢や職業は関係ないと、俺はそう思うんだ」
怜子は保の言葉をニコニコしながら聞いている。
「ねっ、いい息子でしょう?私みたいな女はなかなか結婚できないよね。本人がよくても、子供や親族は猛反対するでしょう。私は保の後押しがあったから、パパと結婚出来て、お店も続けられるのよ。保はサイコーにいい息子なんだから」
怜子は保の頬を人差し指でツンツンする。義理とはいえ親子と言うより、やっぱり恋人同士にしか見えない。
「うっせぇよ……」
保の照れた顔を、初めて見た。
保でもこんないい顔をするんだね。
ちょっと、可愛いな。
「で……名前はなんて言うの?あの病院の看護師さんだよね?」
「はい。朝野雫です」
「雫ちゃん、可愛い名前ね。はい、カシスオレンジ。チェリーものせちゃうね。チェリーの赤い実は雫ちゃんみたいでしょう」
怜子が私の目の前にグラスを置いた。
「はい、保はいつものウィスキー」
保の目の前に置かれたグラス。
グラスの氷がカラカラと音をたてた。
「サンキュー」
保はグラスを手に取ると、私のグラスに軽くあてた。
「カンパイ」
にっこり笑うと、口元から白い歯が溢れた。
私は無言でグラスを手に取る。
カクテルを口に運ぶと、カシスの味が口の中に広がる。
どちらかといえばアルコールに弱い私だが、この気まずい空間と変な緊張から、ゴクゴクと飲み干す。
「雫ちゃん、お酒イケる口なのね。それで、雫ちゃんは私と保のことを勘違いしてたの?」
「そうだよ。怜子のことを俺の彼女だと思ってたんだ」
「えー!私が保の彼女!?悪いけど、私、保なんて趣味じゃないからね。私はパパみたいに、包容力がある大人の男性が好きなんだから。ねっ、パパ」
保の父親は照れ臭そうに俯いた。
どうやら気まずい思いをしているのは、私だけではなかったようだ。
「でも、ヤキモチ妬くなんて可愛いね。じゃあこれで誤解はとけたでしょう。保は口が悪いけど、なかなかいいやつだから、宜しくね」
ヤキモチ?
全然、違うし!
保がいいやつ?
まさか、サイテーの男だ。
私は返答に困り、ヘラヘラと愛想笑いをする。
一時間くらいお店でお酒を楽しみ、開店と同時に私と保は店を出た。
「また、二人で来てね」
怜子が笑いながら、私達に手を振った。お酒に弱い私は、カシスオレンジとカンパリグレープフルーツですでに酔っている。
「なっ、誤解が解けただろ?俺、今付き合ってる人はいないから」
だから何なのよ。
私には関係ない。
私は無言でスタスタと路地を歩く。
「なんだよ、感じ悪いな。俺、お前みたいな奴、初めてだよ。まっいいや。タクシーで送るから、家は何処?」
保が路上でタクシーを止めた。
「下高井戸……」
「なんだ、近いな」
怜子が私の顔を、覗き込んだ。
それは……引くでしょう……。
「いえ……とてもお似合いです」
取りあえず愛想笑いする。
「まっ、普通は引くよな。親父は公務員だし、区役所勤務だし、お堅い職業だし。なあ親父、役所でもドン引きだったよな」
保が笑いながら、父親を見た。
保の父親は苦笑いしながら、ウイスキーを口に運んだ。
「保、私達の話はもうよさないか……」
消え入りそうな声で、ボソッと呟く。
口数も少なく生真面目な感じの父親が、どうして彼女と結婚したのか不思議でならない。
「でも、人を好きになるのって、年齢や職業は関係ないと、俺はそう思うんだ」
怜子は保の言葉をニコニコしながら聞いている。
「ねっ、いい息子でしょう?私みたいな女はなかなか結婚できないよね。本人がよくても、子供や親族は猛反対するでしょう。私は保の後押しがあったから、パパと結婚出来て、お店も続けられるのよ。保はサイコーにいい息子なんだから」
怜子は保の頬を人差し指でツンツンする。義理とはいえ親子と言うより、やっぱり恋人同士にしか見えない。
「うっせぇよ……」
保の照れた顔を、初めて見た。
保でもこんないい顔をするんだね。
ちょっと、可愛いな。
「で……名前はなんて言うの?あの病院の看護師さんだよね?」
「はい。朝野雫です」
「雫ちゃん、可愛い名前ね。はい、カシスオレンジ。チェリーものせちゃうね。チェリーの赤い実は雫ちゃんみたいでしょう」
怜子が私の目の前にグラスを置いた。
「はい、保はいつものウィスキー」
保の目の前に置かれたグラス。
グラスの氷がカラカラと音をたてた。
「サンキュー」
保はグラスを手に取ると、私のグラスに軽くあてた。
「カンパイ」
にっこり笑うと、口元から白い歯が溢れた。
私は無言でグラスを手に取る。
カクテルを口に運ぶと、カシスの味が口の中に広がる。
どちらかといえばアルコールに弱い私だが、この気まずい空間と変な緊張から、ゴクゴクと飲み干す。
「雫ちゃん、お酒イケる口なのね。それで、雫ちゃんは私と保のことを勘違いしてたの?」
「そうだよ。怜子のことを俺の彼女だと思ってたんだ」
「えー!私が保の彼女!?悪いけど、私、保なんて趣味じゃないからね。私はパパみたいに、包容力がある大人の男性が好きなんだから。ねっ、パパ」
保の父親は照れ臭そうに俯いた。
どうやら気まずい思いをしているのは、私だけではなかったようだ。
「でも、ヤキモチ妬くなんて可愛いね。じゃあこれで誤解はとけたでしょう。保は口が悪いけど、なかなかいいやつだから、宜しくね」
ヤキモチ?
全然、違うし!
保がいいやつ?
まさか、サイテーの男だ。
私は返答に困り、ヘラヘラと愛想笑いをする。
一時間くらいお店でお酒を楽しみ、開店と同時に私と保は店を出た。
「また、二人で来てね」
怜子が笑いながら、私達に手を振った。お酒に弱い私は、カシスオレンジとカンパリグレープフルーツですでに酔っている。
「なっ、誤解が解けただろ?俺、今付き合ってる人はいないから」
だから何なのよ。
私には関係ない。
私は無言でスタスタと路地を歩く。
「なんだよ、感じ悪いな。俺、お前みたいな奴、初めてだよ。まっいいや。タクシーで送るから、家は何処?」
保が路上でタクシーを止めた。
「下高井戸……」
「なんだ、近いな」